もりのぶ小児科|新宿区西五軒町の小児科

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はじめに

発熱の原因になる、子どもの日常感染症の一つである溶連菌感染症ですが、どのような原因で感染するかご存じでしょうか?
本記事では溶連菌感染症について、以下の点を中心に解説します。

  • 原因と感染経路
  • 主な症状
  • 溶連菌感染症の検査と治療方法
  • どのような合併症があるのか

溶連菌感染症について正しく理解するためにも、参考にしていただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

 

溶連菌感染症とは

溶連菌感染症は、A群溶連菌によって引き起こされる細菌感染症です。

乳幼児から小学生の子どもに多く見られ、秋から冬にかけての期間が流行時期とされています。中学生以上の方や成人でも感染することがあります。

潜伏期間は2~5日で、適切な診断と治療が求められます。

 

溶連菌感染症の原因

溶連菌感染症は感染力が非常に強く、以下の経路で容易に広がる可能性があります。

  • 飛沫感染:感染者の唾液や鼻水に触れることで感染

  • 接触感染:皮膚同士の接触や手洗い場のタオルなど共有物からの感染

一般的には保育園や学校に通う子どもに多い病気とされていますが、家庭内感染から大人の方が発症するケースもみられます。

また、一度完治しても再び感染することもあるため、周囲の感染流行状況には常に気を配っておく必要があります。
普段から手洗い・うがいを徹底することで、溶連菌感染症は防げることを覚えておきましょう。

 

溶連菌感染症の症状

溶連菌感染症はどのような症状を引き起こすのでしょうか。
溶連菌感染症はのどや皮膚を侵し、以下のような症状を引き起こします。

  • のどの痛み
  • 発熱
  • リンパ節の腫れ
  • 発疹
  • 吐き気

小さなお子様ですと、かすれ声や飲み込みにくさを訴えるケースもあります。

風邪やインフルエンザと症状が似ているように思えますが、咽頭所見や皮膚の症状などから臨床診断して、検査等での確認が可能です。
発熱や咽頭痛などの症状で、上気道感染を起こし、ウイルス感染と違い、抗生剤治療が効果的です。

 

溶連菌感染咽頭炎

溶連菌感染症として最も代表的な症状が溶連菌感染咽頭炎です。
のどの痛みから始まり、全身の倦怠感、発熱が引き起こされます。

また、扁桃部の腫れにより黄白色の膿が生じる場合もあります。
舌の下部表面には「苺舌」と呼ばれる所見が生じ、喉の奥に点状出血が見られるのも特徴です。

猩紅熱

猩紅熱はA群溶連菌によって発症する細菌性疾患であり、溶連菌感染症が原因となる疾患のひとつです。
以前は危険な伝染病として知られておりましたが、現在は抗生物質での治療が広く普及しています。

特徴として、舌や皮膚に起こる皮膚症状が挙げられます。
かゆみを伴う発疹が全身に広がり、舌には白い膜のようなものが見られるようになります。

これらの症状が治まったころに、顔や全身の皮膚がポロポロと剝けてくる「膜様落屑」も、猩紅熱の特徴です。
川崎病の鑑別が必要になることがあります。

 

溶連菌感染症の検査・治療

医療機関では溶連菌感染症に対してどのような検査が行われているのでしょうか。

また、どのような治療が行われているのでしょうか。

詳しく解説していきます。

溶連菌感染症の検査

溶連菌感染症を診断するために、医療機関では以下の検査が行われています。

  • 身体診察
  • 迅速抗原検査
  • 咽頭培養検査
  • 血液検査

地域の流行状況や自覚症状などの身体検査で臨床診断を行い、迅速抗原検査で確認します。

迅速溶連菌培養検査では数分で結果を判定できます。
しかし、菌量が少ないと陰性判定されるケースもあり、やや感度が低いとされています。

そのため、病院では咽頭培養検査や血液検査を組み合わせる医療機関もあります。
とくに、溶連菌感染既往の有無や合併症の診断にも有効とされています。

溶連菌感染症は家族内でも感染が広がる疾患です。

軽症でも家族内に症状が現れている場合は、一緒に検査・治療する必要があるので、しっかり医療機関に相談しましょう。

感染しても、その人の体力や免疫状態で発症するか否か違いますし、発症しても症状が軽症化することもあります。

 

溶連菌感染症の治療

溶連菌感染症の治療として、抗生物質が使用されます。

細菌としては強い耐性をもつものではなく、抗生物質の治療を始めると発熱や咽頭痛の症状が改善します。
以前はペニシリン系の抗生剤が主でしたが、近年では患者個人に合わせてセフェム系の抗生剤が用いられることもあります。

抗生剤の服用後、1~2日程度で発熱や発疹は快方に向かっていく場合が多いです。

しかし、溶連菌の治療を行うためには、7~10日間の服薬治療を続ける必要があるといわれています。

そのため、解熱したからといって薬の服用を自己判断で止めてしまうと、症状再発や合併症のリスクがあります。
感染を予防するためにも、健康的な生活を送り、手洗いうがいを忘れずに行いましょう。

登園・登校目安

溶連菌感染症は身体接触や飛沫感染により、周囲の人に感染が拡大するリスクが高い疾患です。
したがって、溶連菌感染症と診断を受けたら登園・登校は控える必要があります。

抗生剤の服用後は症状が落ち着くため、医師の許可が出るまでは安静を保つようにしましょう。
溶連菌感染症の登園・登校の基準は、症状が軽快することや1日以上の治療を行っていることです。保育園や学校の所定の書類が必要になりますので、指示に従ってください。医師の作成が必要な場合と、保護者の申告で良い場合があります。

各地域流行状況に関しては、各自治体の保健所が情報発信していますので、忘れずに確認しましょう。

 


溶連菌感染症の合併症について

溶連菌感染症は適切な治療を受けることで、数日で改善が期待できる疾患です。

しかし、対応が遅れたり症状が慢性化したりすると、以下のような合併症を引き起こすことがあります。

中耳炎 リウマチ熱 急性糸球体腎炎 結節性紅斑 気管支炎
リンパ節炎 肺炎 敗血症 髄膜炎

とくにリウマチ熱や急性糸球体腎炎、敗血症、髄膜炎は症状が悪化すると命に関わる危険な病気です。

 

リウマチ熱

リウマチ熱は、溶連菌感染症の合併症として多くみられる疾患のひとつです。

感染を契機として、免疫異常などの要因で発症します。

関節の痛み、不随意運動、動悸などを引き起こすほか、心機能にも影響を及ぼします。

 

急性糸球体腎炎

溶連菌感染症の症状が落ち着いたころ、急性糸球体腎炎を起こすケースもあります。

顔や手足がむくみ、尿に血や蛋白が混じるようになります。

数日で改善することがほとんどですが、腎機能に後遺症が残る場合もあり、完治後も継続した観察が必要です。

そのために、当院では1か月後に尿検査を行い、確認するようにしております。

 

まとめ

ここまで溶連菌感染症について解説してきました。

溶連菌感染症についての要点をまとめると以下の通りです。

  • 「接触感染」や「飛沫感染」によって感染が広がる疾患である
  • 主な症状は、発熱、のどの痛み、発疹
  • 薬の服用で症状は落ち着くが、7〜10日間の治療期間が必要である
  • 悪化すると、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの重篤な合併症を引き起こすリスクがある

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。