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インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)について

幼児が感染すると細菌性髄膜炎などの危険な病気を起こす「インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)」をご存知でしょうか。

Hibワクチンが導入される前は、細菌性髄膜炎を日常診療の中で経験し、早期に治療介入をする必要があり、重症化すると命の危険や後遺症が残る、非常に注意が必要な病気です。

本記事ではインフルエンザ桿菌感染症(特にHib)について、以下の点を中心に解説します。

  • インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)の症状
  • インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)の合併症
  • インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)の予防接種について

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)について正しく理解し、重症化しないための感染予防の参考にしていただければ幸いです。

ぜひ最後までお読みください。

 

 

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)とは

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)とは、ヘモフィルスインフルエンザ菌の感染により起きる感染症です。
莢膜の有無により、莢膜型と無莢膜型があり、莢膜型はaからfまでの6型に分類されます。
その中で
b型(Haemophilus influenzae type b)が細菌性髄膜炎の原因菌になり、b型の莢膜に対するワクチンが存在します。(Hibワクチン)

インフルエンザのような高熱を出しますが、小児に細菌性髄膜炎などの感染症を引き起こす代表的な細菌で、冬季に流行する「インフルエンザウイルス」とは別のものです。

以下で、インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)の症状や感染経路について説明します。

 

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)の症状

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)は鼻や喉にいる身近な菌で、症状が無いまま日常生活を送っている無症状感染者の人もいます。

本来は無菌である血液や髄液に菌が侵入し、菌血症や敗血症、細菌性髄膜炎、骨髄炎、関節炎など「侵襲性感染症」を引き起こし重篤な疾患になることがあります。

急性喉頭蓋炎もインフルエンザ桿菌感染症(特にHib)が原因となる重症な疾患で、急激な経過で、喉頭蓋が腫脹し、呼吸困難になり、窒息から死亡に至る場合もあります。
Hibワクチンが導入される前の小児細菌性髄膜炎の原因の約60%はインフルエンザ桿菌感染症(特にHib)が占めていたといわれています。

乳幼児の細菌性髄膜炎や急性喉頭蓋炎は初期症状がはっきりしないことが多く、早めの診断や治療が難しい病気です。

さらに急激に症状が進行して命の危険や後遺症が残る可能性が高いため、ワクチンによる予防が非常に重要です。

 

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)の感染経路

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)は人の鼻や喉に棲み着いている常在菌で、咳やくしゃみなどの飛沫感染や手指などが直接接触して人から人へ感染して広がることが多いです。

 

 

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)が起こす疾患

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)が原因で起こる疾患についてご紹介します。

 

細菌性髄膜炎

細菌性髄膜炎は、インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)などの細菌が脳や脊髄を包む脳脊髄液内に侵入して炎症が起こる病気です。

風邪に似た症状の他に、発熱や嘔吐、痙攣発作から意識障害へと進行することが多いですが、乳児の場合は症状がはっきりとは現れず初期診断が難しいとされています。

急激に悪化する可能性が高く、治療中でも命を落としたり後遺症が残る非常に危険な病気です。

 

急性喉頭蓋炎

食べ物が気管に入らないように、喉の入口を塞ぐ喉頭蓋(こうとうがい)があります。

喉頭蓋がヒブに感染して炎症を起こすと、発熱や喉の腫れ、唾が飲み込めないといった症状が現れます。

喉頭蓋は炎症を起こすと腫れ上がるスピードが早く、空気の通り道がふさがれ呼吸困難に陥り窒息することもある危険な病気です。
小児が急性喉頭蓋炎を発症すると成人に比べ症状の進行が早い特徴があるため、早急な治療が必要になります。

 

菌血症

本来は無菌の血流中に、細菌が巡る状態を菌血症といいます。
菌血症の症状は主に発熱で、他の侵襲性感染症である肺炎や髄膜炎の前段階と考えられています。
菌血症を起こすメカニズムは分かっていません。

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)による菌血症は、肺炎球菌が原因の菌血症と比較すると、髄膜炎などの合併症が続発する可能性が高い傾向にあります。

 

化膿性の関節炎

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)などの細菌が血液に乗って関節の中に侵入して化膿すると、関節内に感染して重症化し、後遺症が残ることがあります。

膝や肘、股関節などの大関節に症状が出やすく、関節の痛み、腫れ、発赤、熱感の他に、発熱や歩行ができなくなる、といった症状などがみられます。

乳児は症状を自分で訴えることができないため、股関節に腫れがあったり、下肢の動きが悪い、関節の近くを圧迫すると痛がるといった症状がないかの観察が必要です。

一方で、乳児は皮下脂肪が多いため、腫れなどの症状を見た目で気づくことは困難です。
そのため、オムツを替える時にやたらと痛がるといった違和感から発見されることがあります。

 

 

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)の治療方法

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)の治療方法と、重症化した場合の後遺症についてご紹介します。

 

耐性菌があると治療が難しい

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)は症状に合わせて抗生物質を投与して治療をしますが、抗生物質に耐性がある菌が増えており治療が難しくなっています。

治療を進めても死亡することがあり、治癒後も後遺症が残ってしまう確率も高いです。

乳幼児の初期症状は特にわかりにくく、診断が遅れる可能性がある難しい感染症なので、感染しないようにワクチンでの予防接種が大切になります。

 

重症化した場合の後遺症

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)の診断と治療が遅れて症状が細菌性髄膜炎まで進行してしまうと、命が助かっても後遺症が残る可能性があります。

細菌性髄膜炎は、脳や脊髄を包む髄膜に細菌が感染して起こるため脳の機能が傷つき、長期的な後遺症として難聴発育障害てんかんなどの後遺症が起きます。

しかし近年ではワクチンが導入されたことにより、細菌性髄膜炎に罹患する人が激減しています。

 

 

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)の予防方法

インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)に感染して重症化すると、命の危険や後遺症が残る可能性があるため、感染しないようにワクチンでの予防が大切です。
以下で、予防接種のスケジュールや注意点などをご紹介します。

 

予防接種のスケジュール

Hibワクチンは生後2ヶ月〜5歳の誕生日の前日までが接種対象年齢です。
表にワクチンの接種スケジュールをまとめたので参考にしてください。

開始年齢初回接種追加接種
生後2ヶ月~7ヶ月未満1歳までに27日以上
(医師が必要と判断した場合は20日)
の間隔をあけて3回接種
3回目接種後に
7ヶ月間隔をあけて1回接種
生後7ヶ月~1歳未満1歳までに27日以上
(医師が必要と判断した場合は20日)
の間隔をあけて2回接種
2回目接種後に
7ヶ月間隔をあけて1回接種
1歳~5歳未満1回接種なし

NIID 国立感染症研究所

 

Hibワクチンの持続期間

年齢が上がるにつれて、自然に感染して免疫を獲得するなどでヒブに対する免疫が高まる傾向があり、5歳以上になると発症するリスクは乳幼児に比べて低いです。

従って、5歳未満の乳幼児にヒブワクチンをしっかり接種することで、ヒブによる侵襲性感染症を発症するリスクが軽減できると考えられています。

 

ワクチンによる副反応

Hibワクチンによる副反応は、接種箇所の赤みや腫れ、痛みなどの局所反応が出ることが多いですが、重篤な副反応は確認されていません。
そのため、Hibワクチンは安全性が高いといわれています。

万が一、軽度な副反応以外の症状が出た場合は、医師の診察を受けるようにしてください。

 

ワクチン接種に注意が必要な場合

ワクチンを接種する日に発熱があった場合、急性疾患がある場合、ワクチンの成分でアレルギー反応を起こしたことがある場合は予防接種ができないため注意が必要です。

また、過去に他の予防接種を受けてアレルギー反応があったり、持病を持っている方、近親者に先天性免疫不全症の病気を持っている方がいる場合は医師に相談してください。

 

 

保育園・幼稚園の入園前に予防接種が大切

保育園や幼稚園での集団生活が始まると、感染症にかかりやすくなります。

集団生活を始めると、子どもたちの鼻や喉にインフルエンザ桿菌感染症(特にHib)を保菌することが多いです。
無症状保菌者なら問題はありません。

細菌性髄膜炎などの侵襲性感染症を予防するために、予防接種を確実に実施しておくことをお勧めします。

 

 

まとめ

ここまでインフルエンザ桿菌感染症(特にHib)についてお伝えしてきました。
インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)の要点をまとめると以下の通りです。

 

  • インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)は重症な侵襲性感染症の原因となる
  • インフルエンザ桿菌感染症(特にHib)が重症化して細菌性髄膜炎を発症すると、後遺症が残る可能性がある
  • ヒブワクチンは生後2ヶ月から接種が可能で、定期接種により十分な免疫を作ることができる

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

参考文献