もりのぶ小児科|新宿区西五軒町の小児科

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はじめに

「子どもがクループ症候群にかかって保育園に行けなくなった」というお話をよく耳にします。
感冒の流行する季節になると増えてくるクループ症候群ですが、そもそもどのような病気なのでしょうか?
また、喘息とはどう違うのでしょうか?

本記事ではクループ症候群について、以下の点を中心に解説します。

  • クループ症候群の原因
  • クループ症候群特有の症状について
  • 喘息とは何が違うのか

クループ症候群について正しく理解し、感染予防・早期治療のための参考にしていただければ幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

 

クループ症候群とは

クループ症候群は、ウイルス感染が原因の呼吸器疾患で、主に気管の入り口辺りの喉頭気管部分が感冒等で腫れるなどの炎症が生じることで知られています。

「クループ」という言葉は、ウイルス感染等が原因である特有の咳を起こす呼吸器疾患の総称あり、特定の疾患名ではありません。
生後6ヶ月〜3歳頃のお子さんに多く見られます。

 

クループ症候群の原因

クループ症候群の発症原因には、ウイルス性、細菌性などが挙げられます。流行時期は、原因となる感染症の種類によって様々です。
秋冬に多く発症する場合は、空気が乾燥し、喉の粘膜が刺激されて炎症が起こりやすくなることが影響します。

  • インフルエンザウイルス
  • RSウイルス
  • ヒトメタニューモウイルス(hMPV)
  • COVID19ウイルス
  • パラインフルエンザウイルス

上記の呼吸器感染を起こすウイルスに感染する機会に、クループ症候群が引き起こされる場合があります。

また、以下の細菌感染から、急性喉頭蓋炎が起こることがあります。

  • ジフテリア
  • インフルエンザ菌B型

急性喉頭蓋炎は、小児に起こる重症感染症の一つで、場合によっては、命にかかわる可能性のある疾患です。

そのほか、アレルギー性の原因によってクループ症候群が増強することもあります。
アレルギー性鼻炎や気管支喘息などのアレルギー疾患を持つお子さんは、感冒時に、アレルギー反応が併発して喉の粘膜が腫れ上がりやすくなり、犬吠様咳嗽が起こりやすくなるため、注意が必要です。

 

クループ症候群の症状

小児に多く発症するクループ症候群ですが、どのような症状が見られるのでしょうか。
特有の症状について詳しく解説していきます。

クループ症候群の症状

クループ症候群の主な症状として、

  • 喉頭部の狭窄に伴う吸気性喘鳴
  • 犬吠様咳嗽
  • 嗄声

の3つが挙げられ、鼻炎、咽頭炎などの症状が先行して現れるのが一般的です。

とくに、「犬吠様咳嗽」と呼ばれる咳は、クループ症候群特有の症状であり、オットセイの鳴き声や犬の遠吠えのように聞こえます。

気道が異常に狭くなることで、「ケーンケーン」「ヒューヒュー」「バウバウ」といった咳音を発し、重症化すると呼吸が困難な状態となってしまいます。

また、幼児期は、保育園等の集団生活を始めた時でもあるため、感染を繰り返し起こしやすく、クループ症候群にかかりやすいです。
また、中耳炎や肺炎など合併症のリスクもあります。

急な発症で、犬吠様咳嗽が起こることが多く、大抵の場合、クループ症候群の症状のピークは3〜4日目であり、1週間ほどで徐々に改善していきます。

しかし、呼吸困難などの症状は夕方以降に悪化する傾向があるため、夜間の対応には注意が必要です。
特に高熱を伴う時は注意が必要です。

乳幼児や幼児に多く見られる病気ですから、保護者は症状が現れた時には適切な対応を行うことが求められます。

クループ症候群の受診のタイミング

呼吸困難感があるような場合は、早めの受診が必要になります。
特に夜間や休日に症状が悪化したときは、救急機関を受診する必要があります。

咳や息苦しさによる睡眠障害は、さらなる体調不良につながる場合もあります。
このような場合は、適切に医療機関を受診し、加療を受けることが重要です。

また、唇の色が紫色(チアノーゼ)に変わり、急激に顔色が悪くなったら、自己判断や自己治療は避けてください。

「いつもとは違う咳や呼吸の苦しさがあったら、すぐに受診する」というポイントをしっかり覚えておきましょう。

 

クループ症候群の検査・治療

クループ症候群の検査

クループ症候群の診断には診察で、臨床症状から診断されることが大部分です。
時には、以下の検査手段が用いられています。

  • 喉頭部X線検査
  • 気管支鏡検査
  • 細菌培養検査

身体診察では、呼吸音、声のかすれ具合、咳音の確認をし、発熱がある場合は体温の測定も行われます。また、酸素飽和濃度Sp02の測定も行います。

もし「クループ症候群かも?」と思ったら、医師に診察してもらう前に、咳を録音することをおすすめいたします。

夜間のひどく辛い咳音を録音しておくと、適切な診断と治療に役立ちます。
スマートフォンなどで簡単に録音できますので、積極的に活用していきましょう。

身体検査だけでは診断が難しいケースでは、喉頭部・胸部X線検査も組み合わせて行われます。
喉頭部X線検査では、喉頭蓋下の狭小化(steeple sign)と呼ばれる気管支の拡張が見られることがあります。

クループ症候群の合併症である肺炎の発見についても、喉頭部X線検査は有用です。
重症なクループ症候群や、症状の改善の悪い経過を繰り返して起こしている場合は、お子様に対して、気管支鏡検査を行う場合もあります。

気管支鏡検査は声帯の状態や呼吸管の形状を評価することによって、クループ症候群の程度を判断し、適切な治療を施すための検査です。
この検査は設備の整った病院での検査であり、専門の鍛錬を行った医師が行う、侵襲性の高い検査になります。

また細菌培養検査は、細菌などの病原体を特定するために行われ、治療に必要な薬剤の選択に役立ちますが、喉頭部が炎症で腫れているため、喉頭部に綿棒を挿入して検査をすることが難しく、通常は行われません。

 

クループ症候群の治療

クループ症候群の一般的な治療法は、鎮咳去痰剤や気管支拡張剤の内服、十分な水分補給と安静といった対症療法が基本です。
喉頭の腫れを抑えるためにエピネフリンの吸入やステロイドの内服の治療法があります。

症状が重い場合には入院を必要とする場合もあり、低酸素状態に対して酸素投与、脱水症状には輸液が行われます。
軽症の場合には、部屋の湿度を高く保った状態で安静にすることで症状の改善が期待できます。

家庭内では処方された薬を正しく服用し、静かで落ち着いた環境を作ることが大切です。
食事は咳が収まっている時に少しずつ与え、水分補給にも十分に注意しましょう。

 

登園・登校目安

クループ症候群の原因がウイルスや細菌であると診断されている場合、周囲の人々に感染を広げないよう、人混みは避ける必要があります。

とくに、子どもたちが多く集まる場所では感染症が広がりやすいため、必ず医師の診察を受けて、登園・登校の時期を相談するようにしましょう。

 

クループ症候群と喘息について

両者は似たような症状を示す病気ですが、クループ症候群と喘息は全く別の病気です。

クループ症候群はウイルスが声帯に感染し、粘膜の腫れと炎症を引き起こす疾患です。
症状の特徴は、独特の咳で、進行するにつれて声がかすれ、喉頭部で息を吸う時にはぜーぜーと音がするようになります(吸気性喘鳴)。

一方の喘息はアレルギー反応や特定の環境要因によって起こる、気管支部分の疾患です。
喘息の場合は、肺の方で息を吸うときではなく息を吐くときに音がするため、クループ症候群と区別することができます(呼気性喘鳴)。

また、クループ症候群は通常1週間程度でおさまる短期的な病気です。
それに対して喘息は、呼気性喘鳴のある時には喘息発作を起こしています。

喘息発作は急性疾患であるものの、毎月のように咳を繰り返す状態であれば、気管支喘息は慢性疾患であり、定期的な治療と管理が必要になります。

喘息の体質を持つお子様がクループ症候群も併発してしまうと、喘息発作を起こしやすいので注意してください。

 

まとめ

ここまでクループ症候群についてお伝えしてきました。

クループ症候群の要点をまとめると以下の通りです。

  • クループ症候群とは、小児に多く、ウイルスが原因の特有の咳(犬吠様咳嗽)を起こす呼吸器感染症である。
  • クループ症候群の特徴は、吸気性喘鳴・犬吠様咳嗽・かすれ声(嗄声)である。
  • 喘息は気管支の慢性的な疾患で、クループ症候群とは病態や治療アプローチが異なる。しかし、合併することもある。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。