もりのぶ小児科|新宿区西五軒町の小児科

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A型肝炎について

近年の日本では小児での日常的な感染症ではなくなりましたが、A型肝炎についてご紹介します。

A型肝炎は食べ物などの食中毒として感染することがあります。
海外では、数年に1度程度ですが、大規模集団感染症の事例が起きてレポートされています。

本記事では、A型肝炎について、以下の点を中心に解説します。

  • A型肝炎とは
  • A型肝炎の治療方法
  • A型肝炎の予防

A型肝炎について正しく理解し、感染を防ぐ行動の参考にしていただければ幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

 

A型肝炎とは?

A型肝炎は、A型肝炎ウイルスによって引き起こされるウイルス性肝炎です。
主に一過性の経過をたどり、慢性化することはありません。

A型肝炎は世界中でみられる感染症で、特に衛生環境が十分でない地域を中心に多く発生しています。
日本国内では水回り等の環境衛生が向上して患者数は減りましたが、輸入食品や海外渡航をきっかけとした症例が報告されています。

身近な生活の中でも起こる可能性のある感染症であることを理解しておくことが大切です。

 

A型肝炎の原因と感染経路

A型肝炎の原因は、A型肝炎ウイルスへの感染です。
主な感染経路は「経口感染」、「糞口感染」と呼ばれ、ウイルスが口から体内に侵入することで感染します。

具体的には、以下のような経路が報告されています。

  • A型肝炎ウイルスで汚染された水や食品
  • 感染者の排泄物との接触

これらの経路は、ウイルスに汚染された食品の経口摂取などの衛生管理が不十分な場面や、性行為等での不衛生な行動で成立しやすいです。

2018年に報告が増え、男性間性交者(MSM)を中心に流行しました。
2020年からはCOVID19感染症の流行で、海外渡航が減少し、生活行動が変化したために減少しました。

 

A型肝炎の症状

A型肝炎は、ウイルスに感染してからおよそ26週間ほどの潜伏期間ののちに発症します。
発症時には、かぜに似た全身症状が先に現れ、その後に黄疸などの肝臓の障害による症状が続くという経過をとることが多いとされています。

代表的な症状として、発熱、全身のだるさ(倦怠感)、食欲不振、吐き気や嘔吐、腹部の不快感や腹痛、下痢などがみられます。
病状が進むと、肝臓の炎症に伴って、皮膚や白目(眼球結膜)が黄色くなる黄疸、尿の色が濃くなる(濃色尿)、便の色が白っぽくなる(灰白色便)、肝臓が腫れる(肝腫大)といった急性肝炎からの肝機能障害を反映する症状がみられることもあります。

症状の現れ方や強さには年齢による違いがあり、成人では入院加療が必要になるくらいの重症な経過をたどります。

一方、乳幼児や小児では症状が軽い、あるいは症状が出ないまま経過することも少なくありません。
成人では、70-90%が顕性感染(自覚症状がみられる)を起こしますが、5歳以下の小児では約90%が不顕性感染自覚症状がみられない)とされています。
一度感染すると終生免疫が獲得されます。

診断は、急性期での抗体検査で、抗HAV IgM抗体の検出になります。

 

A型肝炎の治療方法

A型肝炎に対する治療は、ウイルスそのものを直接排除する薬剤による治療ではなく、症状や体調の変化に応じた対応が基本となります。
多くの場合、対症療法と安静にして経過をみることにより自然に回復するとされています。

 

特効薬の有無と対症療法

現在、A型肝炎に対してウイルスに直接作用する特効薬は存在していません。
そのため、治療は発熱や倦怠感などの症状を和らげながら、回復を待つ対症療法が基本となります。

体調がすぐれない時は無理をせず休養をとり、食事が困難な場合は消化の良いものを中心に体の負担を減らす工夫が必要になります。

また、脱水を防ぐためにも、意識して水分をとることが重要です。
医療機関を受診した場合は、肝庇護剤などの薬剤を使用した急性肝炎の治療を受けることになります。

 

入院が必要になるケース

自宅で安静に出来ない程度の重症な経過や急性肝不全への進展があると、入院が必要になります。
治療では、嘔吐や下痢によって不足する水分を補いながら、体調の安定と栄養状態の維持を図ることが目的とされています。

 

A型肝炎が発生している地域

A型肝炎は世界中で発生している感染症であり、地域によって発生状況や感染の背景が異なります。
特に衛生環境やワクチン接種の普及状況によって、流行の頻度や感染経路に違いがみられます。

アメリカでは、A型肝炎に汚染された食物の経口摂取を介して集団発生を起こす事例が報告されたり、A型肝炎に感染した子どものオムツ交換を介して家族内感染を起こしたりします。
そのため、子どもへのワクチン接種が感染拡大防止の対策に有効と考えられています。

アメリカでは、1歳以降で定期接種のプログラムにA型肝炎ワクチンが導入されています。

 

日本国内の発生状況

2019年までの報告では、国内での感染例の多くが成人男性で、外食等の飲食の機会が多いことが影響していることが一因と考えられます。
ただし、2018年はMSMを中心とした流行でした。

2020年から2025年の感染者数のうち54%が男性となり、生活習慣や行動様式の変化が影響しています。
2021年に英国やオーストラリアで、ヨルダン産の輸入食品(デーツ)関連のA型肝炎の集団発生があり、その他、ザクロ、乾燥噪トマト、冷凍ベリー等の輸入食品に関連した集団発生が報告されております。

近年は60歳以上の高齢者の割合が増えています。
20
年前の血清疫学調査(抗体の保有状況)で、40歳代以降で抗体価を有する傾向があることが知られていましたが、免疫を持たない感受性者が高齢化している事を反映していると考えられます。

また、海外渡航に関連する感染例も報告されています。
潜伏期間が長いために、海外赴任から帰国後に発症するケースもあります。

日本は食の安全に尽力しており、A型肝炎は流行することが少ないです。
ただ、A型肝炎ワクチン定期接種に含まれていないため、小児や若年成人で免疫を持たない人が多数存在している状況にあります。

それぞれの国の、社会での行動様式、罹患者の年齢層などのターゲットにより、定期接種の導入の必要性、ワクチン接種の戦略が異なります。

 

世界的な流行状況

世界的には、上下水道など衛生環境が十分でない地域を中心に、A型肝炎の発生が多い地域が存在します。
特にアジア、アフリカ、中南米などが流行地域としてあげられています。

流行地域に長期的に渡航する場合や、現地の人と宿泊を共にしたり、活動したりする場合は渡航前にワクチン接種を受けることが推奨されます。

感染症発生動向調査で報告された国外感染例の主な渡航先は、パキスタン、インド、韓国、タイ、ミャンマー等のアジアの国でした。

 

A型肝炎の予防

A型肝炎は、ワクチン接種と食品の衛生管理などによって予防につなげることができる感染症です。
患者の排泄物や汚染食品の適切な処理、手洗い等の衛生管理の徹底、十分な加熱調理(851分以上)、塩素剤での消毒等の感染源および感染経路対策が重要です。

 

ワクチンによる予防

A型肝炎にはワクチンがあり、接種により感染予防が可能とされています。

日本での接種方法としては、24週間あけて2回接種し、約24週間後に追加接種を行う方法が示されています。
追加接種により、免疫がより長く保たれるとされています。

海外で接種を受ける場合は、2回接種のワクチン(1回目接種後、6か月以上あけて2回目)が使用されています。
ワクチンの製品が異なるため、現地の医師と相談して接種を受ける必要があります。

世界保健機関(WHO)からは、1歳以上からの接種が推奨されています。

流行地域への渡航者、医療従事者、慢性肝疾患患者、MSMPWID等の高リスク者、重症化リスクの高い高齢者は、ワクチン接種が推奨されます。

 

日常生活での感染対策

A型肝炎は、A型肝炎ウイルスに汚染された飲食物や水を介して感染することがあるため、国レベルでの食の安全への対策と家庭内での衛生管理が重要とされています。
日本では、20年以上前に、牡蠣の生食後にノロウイルスとA型肝炎の食中毒を起こした事例があり、外食時はリスクマネージメントしながら食事を楽しむことが大事です。

特に海外では、飲み水はミネラルウォーターや一度沸騰させた水飲食物は、十分に加熱されたものを摂ることが勧められます。
生水や氷、生肉、生野菜は注意が必要です。
果物については、洗浄水の状態が不明な場合、自分で皮をむける果物を選ぶことが安全性を高める方法として示されています。

また、食事の前やトイレの後には、石けんと流水での手洗いの一般的な衛生管理を怠らないことが大切とされています。

 

まとめ

ここまで、A型肝炎についてお伝えしてきました。
A
型肝炎の要点をまとめると、以下の通りです。

  • A型肝炎は、A型肝炎ウイルスに汚染された食べ物や水を介して感染する急性肝炎
  • ワクチン接種接種により、感染の予防につなげることが可能
  • 海外に長期間で滞在する時は、渡航前のワクチン接種での予防が重要

これらの情報が、A型肝炎への理解を深め、予防を考えるきっかけになれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

参考文献