もりのぶ小児科|新宿区西五軒町の小児科

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水痘とは?症状や治療方法、ワクチンについて解説

水痘は大人になるまでにほとんどの方が感染するとされてきました。
水痘は「水ぼうそう」とも呼ばれます。英語では、varicella もしくは chiken pox と言います。

しかし、2014年から(11年前)の定期接種で予防接種を受けるお子さんが増えてきました。
小中学生の年長者での罹患やワクチン接種を受けたにも関わらず罹患した等で、感染者の年齢分布が変わっています。

ところで、水痘はどのようにして感染するのでしょうか。

また、予防するには、予防接種以外にどのような点に気をつけるべきでしょうか。
本記事では水痘について、以下の点を中心にご紹介します。

  • 水痘を発症する原因とは
  • 水痘はどのような経路で感染するのか
  • 水痘の発症者の登園や登校について
  • 水痘の予防接種はいつ受けるのがよいのか

水痘について理解するためにも参考にしていただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

 

水痘について

水痘(すいとう)は、ウイルス性の発疹症です。
水痘・帯状疱疹ウイルス(varcella-zoster virus:VZV)に感染することで発症します。

潜伏期間は2〜3週間程度で、発症すると痒みのある水泡を伴う皮疹(水泡疹)が全身に広がります。
38度前後の発熱が2-3日間伴うことがあります。


水泡疹がかさぶたに変化すると、治癒したとみなされます。
発症から治癒までは、平均で約1週間ほどかかります。


水痘は非常に感染力が強いため、急性期は登園・登校を控える必要があります。

なお、水痘の発症者の約9割は子供です。

 

2025年は、水痘が小中学生を中心に流行が起きています。
東京都の感染症情報センターのHP(https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/ )に掲載されている報告者のデータ(https://survey.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/epidinfo/weeklyage.do )を用いて、年齢分布のグラフを作成しました。

ワクチンの接種対象の1-2歳での報告者より、6-9歳と10-14歳の小中学生に相当する年齢層での報告が多い傾向にあります。

15歳以上ででも報告があり、15歳から29歳以下で初感染で水痘に罹患した方もおられます。

水痘に罹患したことのある人が、成人になってから帯状疱疹として発症することがありますが、この報告には含まれません。

水痘ワクチンの定期接種により接種者が増えた一方で、コロナ禍によって流行が抑えられていたため、小学生以上で免疫を持たない人が増加しています。

さらに、1歳代で接種を受けた人の免疫が時間とともに弱まり、流行を抑えきれなくなったことも要因と考えられます。

 

水痘の初期症状

水痘の主な初期症状には以下があります。

  • 水泡形成を伴う、掻痒感のある全身性の皮疹
  • 38℃前後の発熱

多くの場合、顔・腹部を中心に全身に赤く痒みのある発疹があらわれ、頭部にも皮疹ができることがあります。
発熱がみられることが多いですが、発熱がない事もあります。

発疹の出始めは小さな発赤の皮疹ですが、次第にふくらんで水泡疹になります。
また、新しい皮疹と、痂皮化(かさぶたに覆われる)した皮疹が混在することも特徴です。
後述する水痘ワクチンを受けている子の場合は、症状が軽症化し、皮疹の数は少なくなります。

病初期には、水痘かどうか判断に迷うことが増えています。
臨床診断だけでは分からない場合は、血液検査で抗体価を測定し、評価する時もあります。

水痘様の発疹を呈する他の感染症もあります。

白血病、悪性腫瘍、免疫不全、免疫抑制剤の使用中で免疫機能が低下している者が水痘に罹患すると重篤になりやすいです。
播種性血管内凝固症候群(DIC)等を合併し、死亡するという極めて重症な経過になります。

 

水痘の感染について

水痘は感染力が非常に強いことが特徴です。
具体的な感染原因や感染の仕方について紹介します。

感染原因

水痘の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスに感染することです。

水痘・帯状疱疹ウイルスは、ヘルペスウイルス属の仲間で、帯状疱疹の原因菌としても知られています。

ヘルペスウイルスは、一度感染すると生涯を通じて体内に潜伏し、免疫が下がったときに活性化します。
水痘・帯状疱疹ウイルスに初めて感染した場合(初感染)は、水痘という病気として症状があらわれます。

水痘の治癒後も、ウイルスは体内に潜伏し続けます。

体内に潜伏したウイルスは普段は眠っているものの、成人になっても、病気の罹患後や疲労の蓄積、化学療法や免疫抑制剤等の治療などで身体の免疫が著しく低下すると再活動し、帯状疱疹を引き起こします。

 

感染経路

水痘・帯状疱疹ウイルスは感染力が非常に強く、空気感染するのが特徴です。

水痘の主な感染経路は空気感染ですが、他にも、接触感染の場合もあります。
発症者の水泡疹や水泡疹から出た浸出液に触れる場合に接触感染を起こします。

水痘帯状疱疹ウイルスが感染力を持つのは、発症の約2日前〜治癒までの期間です。

治癒とは、水泡疹が全てかさぶたに変化した段階を指します。

 

幼稚園・保育所・学校に行っていいの?

水痘の発症者の約9割は10歳ごろまでの小児が占めます。

では、小児が水痘を発症した場合、登園・登校はどうしたらよいでしょうか。

 

出席停止になるの?

水痘・水疱瘡の患者は、「学校保健安全法」によって、出席停止となります。

水痘・帯状疱疹ウイルスは感染力が強いため、免疫の持たない子たちの集団の場では集団感染を起こすリスクがあります。
学校などで1人発症すると、クラス内の生徒で水痘に罹患していない人や、水痘ワクチンを受けていない人のほとんどが感染するといわれています。

周囲への感染を防ぐために、感染者は感染が判明した時点でお休みされるのが良いです。

出典:新宿区 登園基準 乳幼児に多い主な感染症 別表1 (shinjuku.lg.jp)

 

出席停止期間について

学校保健安全法では、水痘・水疱瘡の出席停止期間は「全ての発疹が痂皮化するまで」と定められています。
また痂皮とは、かさぶたのことです。

水痘では、水泡疹ができ、発疹は時間とともにかさぶたに覆われます。

新しい皮疹が出現したり、水泡疹が残っている段階では、ウイルスはまだ感染力を持っています。

水痘では、発疹が次々にあらわれるのが特徴です。
かさぶたに覆われた皮疹と新しい皮疹が混在します。 様々なステージの皮疹が混在することも水痘の特徴です。

水痘の急性期には周囲への二次感染を防ぐため、保育園や学校をお休みしましょう。
治癒までの期間は通常1週間ほどですが、抗ウイルス薬による適切な治療で短縮が可能であり、回復には個人差があります。

そのため、登園・登校の再開時期については、症状が落ち着いた時点で一度医師に相談することが望ましいです。
実際に多くの保育園や学校では、登園・登校にあたっては医師からの登園・登校許可証を必要としています。

 

水痘の予防法について

水痘は予防接種での予防が有効な対策です。

 

予防接種「水痘ワクチン」

水痘ワクチンは、2014年10月から定期接種となりました。

水痘ワクチンによる副反応は、接種部位の腫脹や発熱などの一般的な程度の副反応があります。

なお、水痘にかかった方は免疫を獲得しているため、予防接種は不要です。

しかし、水痘様の皮疹で、臨床診断だけでは診断が難しい場合があります。その場合は、接種を受ける事がお勧めされます。

定期接種での、水痘ワクチンの予防接種は2回です。

対象者は1歳以上3歳未満の小児です。

1回目の接種は生後12か月後で、MR(麻疹・風疹)混合ワクチンと同時に受ける場合が多いです。
2回目の接種タイミングは、1回目の接種後6~12カ月が一般的です。

基礎疾患を持つ方で水痘罹患がリスクになる場合は、接種後3か月以降での接種、
保育園等の集団生活を送るなどの接触の機会が増える社会的な理由の場合は、接種後6か月以降に接種します。

接種後3~4か月後に接種するよりも、接種後5~7か月後に接種した方が抗体価が高くなる傾向があります。

ただし、アメリカでは、1歳に1回目の接種を行い、4-6歳で2回目の接種を受けるスケジュールになっています。
これは、1回接種したのにかかわらずに罹患した人が4-6歳に多かったという疫学データに基づいて、
スケジュールが決まられた経緯があります。

接種したのにも関わらず水痘に罹患した要因には、
接種しても免疫が獲得できなかった、もしくは弱かったケース(1次免疫不全)に対して、追加接種をする目的の場合と、
免疫が獲得したけど、時間とともに弱くなっていくケース(2次免疫不全)に対して追加接種を行う場合があります。


1~3歳未満の方は、定期接種として予防接種を受けられます。
しかし3歳以上の方が水痘ワクチンを受ける場合は、任意接種となります。

2025年の小中学生を中心とした水痘の流行は、定期接種の見直しにつながるイベントであり、今後は1歳と4〜6歳(特に年長児)での接種が検討されると考えられます。
ただし、具体的な変更方法については今後の議論を見守る必要があります。

なお、任意接種での費用は自己負担となり、当院では水痘ワクチンを8,800円(税込み)で接種いただけます。

水痘罹患児と接触した場合、接触後72時間以内にワクチン接種を受ける事で、発症予防、軽症化、重症化の予防が期待できます。

1回目のワクチン接種後は、水痘を80~85%予防できると考えられています。
さらに2回目を接種することで、周囲への感染リスクを大幅に下げられます。

しかし、水痘ワクチンを接種しても罹患するケースがあり、breakthrough(接種後罹患の水痘発症)と呼ばれている問題があります。

ワクチン開発の当初の目的であった、ハイリスク患者(白血病、悪性固形腫瘍、ネフローゼ症候群、重症気管支喘息)への水痘予防にも使用できますが、免疫機能低下者への接種は慎重にする必要があるので、接種基準が定められています。

帯状疱疹予防としても水痘ワクチンを接種できます。対象者は50歳以上で、任意接種になります。
日本でも、2020年1月から乾燥組換え帯状疱疹ワクチンが50歳以上の人を対象に接種できるようになりました。

2025年から、年度内に65歳を迎える方などを対象に定期接種が始まりました。
5年間の経過措置で、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳、100歳以上(令和7年度のみ)の方も対象となりますので、内科や皮膚科でご相談ください。

新宿区では、新宿区に住民票があり、接種日に50歳以上の方を対象に任意接種の助成もあります。

 

水痘の治療法とは

治療を行う場合は、内服薬や軟膏を用います。
内服薬は、バラシクロビルという抗ウイルス薬です。

抗ウイルス薬には、痒みの緩和や新しい発疹の予防が期待できます。
すでにできた発疹については、かさぶたに変化するまでの期間が短縮できます。

なお、内服薬は発症後48時間内に服用すると高い効果を期待できます。

軟膏は痒み止めとして、カチリが処方されます。

 

治療中に気をつけたいのは、水ぶくれをかき破らないようにすることです。

小児の場合は、かゆみを我慢できずに搔き壊してしまうことがあります。
水ぶくれをかき破ると、2次感染を起こして化膿して治りが遅くなったり、治癒後に痕が残ったりすることがあります。

患部を水タオルで冷やすなどして対処しましょう。

 

まとめ:水痘

ここまで水痘についてお伝えしてきました。

水痘の要点を以下にまとめます。

  • 水痘は、水痘帯状疱疹ウイルスに感染することで発症する
  • 水痘のウイルスは感染力が非常に強く、空気感染を起こし、飛沫感染や接触感染などによっても感染する
  • 水痘の発症者は、水疱瘡が全てかさぶたに変化するまで、保育園や学校等はお休みになり、登園・登校許可書が必要となる
  • 水痘の予防接種は、定期接種の場合1~3歳までの間に2回受けます

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

2022年8月9日初稿
2025年5月15日更新


参考文献:予防接種Q&A